大人の修学旅行@奈良
修学旅行の定番と言えば、奈良と京都。
私の通っていた高校も、ご多分に洩れずその2都市だった。 ただし、自由行動があった京都とは違い、数ある寺を次々連れ回された奈良はかなり印象が薄い。 覚えているのは、薬師寺のお坊さんの説教が少し漫才混じりで面白かったこと — 関西とはお坊さんまでもがノリツッコミなのかと心底感動した —、そして奈良公園で鹿に追いかけ回されたこと。 しかも、前者はつい最近まで、なぜだか薬師寺は京都の寺だと思い込んでいたし、後者は「鹿=見かけによらず凶暴=怖い」と思い込みだけが残って映像は何一つ浮かばない始末。 本当に修学旅行甲斐のない高校生だったのだなあと、この齢になって反省するも、 「田舎の高校一年生なんて、神社仏閣より買い物!都会で買い物がしたかったのよ! 大仏より友達や好きな男の子なわけですよ!!それが高校生って年頃でしょ!」 ・・・と、友達に熱弁しながら、高校生の頃を思う。 そう、高校生の頃は神社や寺になんて興味がなかった。それよりも京都の四条通で買い物できるほうが嬉しかったし、友達と四六時中一緒に過ごせるほうがわくわくした。 それはそれで、きっととても健全で、必要な青春時代だったんじゃないだろうか。 そんな青春時代は過ぎ去り、私ももう立派な大人。 いまや神社や寺を訪れるのは大好きだ。 そんな、古都を十分に楽しめる年齢になった今、再び奈良を訪れることにしたのだった。 東大寺南大門。 16歳の頃、確かにここへ来ているはずなのに、スケールの大きさに度肝を抜かれる。 お、おっきーい!! あれから数ある神社仏閣を見てきて、東大寺南大門が大きいほうだとは知っていたけれど、せいぜい鎌倉の建長寺の門くらいかと思っていたのだった。記憶違いも甚だしい。 東大寺南大門といえば、教科書にも出てくる運慶さんと快慶さんが作った『金剛力士像』が有名。 日本史が苦手な私でも答えられるくらいベーシックな問題に出てくるやつだ。 右に吽形、左に阿形。吽形("うん”ぎょう)は、その発音通り"ウン!”と口を閉じているほうで、阿形("あ"ぎょう)は、こちらもその発音通り"ア!"と口を開けているほうなのでわかりやすい。 そこまではよかったのだけれど、いざ見てみてびっくりした。 「うそ! こんなにおっきいの!!?」 そして、 「え!! 木でできてるの!!?」 せいぜい大きくても4〜5メートルくらいかなと思っていた。が、明らかに3、4階建ての建物くらいはありそうだった。 説明を読んでみると、なんと8.5メートル。そんなに大きかったのか。 そして、『金剛力士像』という名前のイメージで、金でできていると思っていたことも誤りで、金剛力士像は木像なのだった。金剛力士というのは、仏教の守護神の固有名なのだそうだ。 奈良にて味合う、無知の知。私って何も知らないんだなー。 門をくぐってさらに進むとついに見えてくるのが東大寺大仏殿。 ここが有名な大仏様がいる建物で、拝観料を払って入ることになる。 南大門の大きさもさることながら、この大仏殿もまた異様にでかい。 奈良のお寺って本当にスケールが大きいなあ。 まだ紅葉には早いと言われていたけれど、訪れてみるとあちらこちらの木々が色付いていた。 いいときに来たなあと思いながら、紅葉とお寺の景観を楽しむ。 東大寺の庭には紅く色付いた紅葉がたくさん見て取れて、行き交う人もまた秋の色合いを楽しんでいるようだった。 大仏殿内、中央にいらっしゃるのが東大寺の大仏様。 ここで再び「おっきーい!!」という感嘆が飛び出た。 大きい。とても大きい。こんな巨大なものを昔の人はどうやって作ったのだろう。 大きいとは知っていたし、心の準備もしてきたけれど、その大きさは私の予想をかなり上回っていた。 鎌倉の大仏よりは大きいと思っていたけれど・・・ここまでとは。 大仏殿内は静かで厳かなのかと思いきや、たくさんの観光客で少し賑やかだった。 驚いたのが撮影可能であったこと。入る前にいそいそとカメラをしまったのに、大仏殿内ではたくさんの人が写真を撮っていて、様子をうかがってみるとどうやら三脚さえ使わなければ良いらしい。 奈良のお寺はおおらかだなあ。 賑やかな大仏殿の片隅にあるベンチに座って、しばらく大仏様を見上げ続けた。 とても穏やかな顔。大きさの割に全く威圧感はなくて、スケールの大きさはそのまま大仏様の心の大きさのようにも思えた。 手の平は人一人寝そべることができるくらい大きく、西遊記で孫悟空を手のひらに載せていたあれは、実スケールだったんだなあと驚く。 大仏殿内では、大仏様の周りをぐるりと一周できるようになっており、裏側では大仏様の身体と、その光背がどのように支えられているかを見ることができる。 大仏様と言えどやはり支えは必要。支え、支えられているからこそ、そこに在る。それは人間と一緒なわけです。 奈良では生憎の雨だったのだけれど、土砂降りという訳ではなく、静かにしとしとと降り注ぐいかにも秋雨といったものだった。 濡れていっそう濃い褐色になった木造の建築物と、濡れた地面に風情があって、ああ、こういうのも良いかもと思えた。 帰りは東大寺ミュージアムに併設されているカフェ『茶廊・葉風泰夢』でひと休み。 日餅(にっぺい)という、中国の月餅に似た菓子を頂いた。 窓の向こうに色鮮やかな黄葉が見え、雨がしとしと降るも、カフェの中は暖かい。 日餅の甘さがふわりと口に広がって、ハーブティーと一緒にゆるりと溶けていく。 高校生以来の奈良。 確かにここへ来たことがあるはずなのに、まるで初めてのように驚きの連続だった。 記憶なんて当てにならない。写真や日記みたいなものが残っていれば別だが、記憶にしか残っていないものなんて極めて適当なんだろう。 そんな記憶の中にも、大切なことは無意識に残るらしい。 なんとなく、奈良に行きたいなとずっと抱いていた気持ち。 高校生の頃、奈良で過ごした時間は覚えていないなりにも楽しかったのだろう。 そのぼんやり残った好印象がきっと今日、私をここへ連れて来たのだと思う。 時を越えて、場所を越えて。
by norlie
| 2012-11-17 23:48
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