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異国の秋
横浜には三つの秋がある。

一つは、都会の秋。
みなとみらいや山下公園などのベイエリアを中心に、様々なイベントやオータムフェスタが開かれ、多くの人で賑わう。
ビールを片手に、わいわい食欲を満たしたくなったら、ここがオススメ。

二つ目は、古き好き日本の秋。
三渓園や隣町の鎌倉では、紅葉に彩られる神社仏閣や日本家屋など、古都の風情を楽しむことができる。
関東の小京都として、訪れる人の数もこの時期は非常に多い。

そして三つ目が、異国の秋。
山手の西洋館を中心に、異国情緒溢れる石畳や並木道が一斉に秋色に染まる。
かつては異国にルーツを持つ人々が住んでいた西洋館。
その外観も植えられている木も、かつての居住者が育った異国の地を思わせるものが多いが、特に秋は、その色がより一層強まるように思う。

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数ある西洋館の中でも、私が一番好きな異国の秋を見せてくれるのが『外交官の家』。
イタリア山庭園という敷地内にあるこの建物は、山手の西洋館の密集地域から少し外れたところにある。
ここへ来るには、元町・中華街駅から向かうよりも、JRの石川町駅から向かったほうがかなり近い。

柔らかな卵色の壁に、濃褐色で縁取られた屋根と窓枠。
可愛らしい木造の家の隣には、メタセコイアの並木が続く。
夕日に染まったメタセコイアは、ノスタルジックな朱。
これはまさに、私が思い描くアメリカ北東部の秋の風景だ。

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紅葉し、落葉する針葉樹があるということを知ったのは最近のこと。
上高地のカラマツを見て、しっかりと縁取られた広葉樹の色付きとは違う、その繊細な美しさに心がぐっと惹き付けられた。
細い針のような葉が寄り集まって、真綿のようなふわふわとした木の形を作る。
黄褐色や朱色に染まると、その外見はより柔らかさを増す。

だからこの日、毎年のように通っている外交官の家の隣で、何となく雰囲気が好きだと思っていたこの並木道を構成するのが、落葉針葉樹だったことに気づいたときは、妙に納得した。
マツ科のカラマツとは違う、スギ科のメタセコイア。
落葉針葉樹の美しさに、私は何年も前から出会っていたのか。

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刷り込まれた秋の風景からか、この並木道は銀杏だとばかり思っていた。
けれど、銀杏があるのは、お隣のブラフ18番館のほう。
こちらには、輝くばかりの黄金色に染まった大銀杏が、館の周りをとり囲んでいる。
銀杏の木の下には、形の良い木製のベンチが一つずつ。
金の絨毯の上に、座っているかのよう。

コントラストの低い、柔らかな夕日色に染まる西洋館の秋。
館の中では、12月いっぱい、毎年恒例の『世界のクリスマス』が開かれている。
乾いた北風に吹かれながら、コートの襟を抑えて秋色の並木道をくぐったら、暖かな館の中へ。
すると、季節は秋から冬へ、紅葉からクリスマスへと早変わり。
二つの季節を一緒に味わえるのも、山手の秋の良いところだと思う。
by norlie | 2012-12-02 23:56 | 横浜暮らし
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