Les Miserables / レミゼの音楽 1


映画『レ・ミゼラブル』を観てきました。
ミュージカルとして有名すぎる、歴史ある作品。
長年をかけて、多くの人に愛されている作品であるだけに、ミュージカル映画化が吉と出るか凶と出るか不安でもありましたが、トム・フーパー監督と素晴らしいキャストは見事にその期待に応えてくれたように思います。

一度、帝国劇場のミュージカルを観に行ってから、音楽が気に入って、ロンドン公演のCDを何度も聴いてきた作品。
そんな『レ・ミゼラブル』の感想を、私の大好きな音楽の観点から書き記してみたいと思います。

この『レ・ミゼラブル』というミュージカルは、同じメロディーが何度も何度も劇中で繰り返される作品です。
『夢やぶれて』のような一曲から、ほんの僅かな1台詞のメロディーまで、いくつかのメロディーが様々に展開されて何度も登場します。
その中でも前半部(囚人時代〜コゼット幼少期)と、後半部(コゼット成長後のパリ〜ラスト)で、同じメロディーが使われているシーンに着目して、自分なりの感想を書いてみたいと思います。



1. I Dreamed Dream(夢やぶれて) / One Day More

『レ・ミゼラブル』の最も有名な劇中歌。
ファンティーヌの歌う『I Dreamed Dream(夢やぶれて)』は、叶わなかった夢や失われた希望を歌う、とても切ない曲です。

この有名なメロディーは、他のシーンでも何度も登場します。
中でも印象的なのが革命前夜、後編のオールキャストで歌われる"One Day More"の冒頭です。
バルジャンは他のメロディーから始まるのですが、そのすぐ後、マリウス、コゼット、エポニーヌの三人がそれぞれの恋心を歌うシーンでこのメロディーが使われます。

自身の夢や希望を失ったファンティーヌ。
愛する人と離ればなれになってしまうマリウスとコゼット。
振り向いてくれない人を愛してしまったエポニーヌ。

届かない想いや願い、叶わぬ夢を歌うモチーフ。
ファンティーヌの夢を若者達が受け継ぐかのように、同じメロディーが歌い継がれます。


2. Look Down (下を見ろ)

冒頭で歌われる囚人達の歌。
「下を見ろ、下を見ろ」という歌詞は「俺たち囚人の、この苦しむ姿を見ろ」というシーンで歌われます。
お前達の足下にいるのは同じ人間なんだという、苦しさと強い怒りにも似た諦めを感じさせるメロディー。

このモチーフが全く同じメロディーで登場するのが、後半部の冒頭、パリの貧民達のシーン。
「下を見ろ、下を見ろ、足下の物乞い達を!」
貧民街の少年ガブローシュを筆頭に、パリの乞食や娼婦、労働者、革命に走る学生達が歌い上げます。
"Look Down, Look Down, Upon your fellow man!"
「下を見ろ、下を見ろ、お前達の仲間を!」


豊かな現代からは想像もつかない格差社会。
苦しむ最下層の人々の叫びが痛烈に聴こえてくるような曲です。

また、このメロディーは前半部のラストでも少しだけ使われているシーンがあります。
ファンティーヌの死後、バルジャンとジャベールが対決するシーンです。
"Valjean, at last, We see each other plain!"
「バルジャンよ、ついに私達が相見える時が来た!」


"Look Down"と同じメロディーにのって始まるこのシーン。
執念の末に再び相見えた、そんなジャベールの怒りや激情が表れているかのようです。
頑なジャベールもまた、囚人や貧民達のように、苦しい枷にとらわれた一人なのかもしれません。


3. Valjean's Soliloquy (バルジャンの独白) / Javert's Suicide (ジャベールの自殺)

前半の最初、司教様に救われたバルジャンが、新たな人生を生きることを誓う一曲。
「なぜ彼はこんな男を許したのか? 施しを与え、信じ、兄弟と呼んでくれた。
どうしてそんなことが? 世界を憎み続け、世界もまた俺を憎み続けて来たのに!」

これと同じメロディーが使われているのが、ラストのジャベールの自殺のシーンです。
「どうやって彼を許せと言うのだ? 私を生かし、自由にしてくれた。彼は私を殺すこともできたのに!」

司教様の愛情に触れ、自分の生き方を恥じて、新たな人生を生きることを決意したバルジャン。
バルジャンに救われ、自分の信条が間違っていたことを知って、命を絶つことを選んだジャベール。

その決断は対極なれど、彼らの身に起こった出来事はどこか似ています。
これまでの生き方が間違いだったと知った動揺と。次の一歩への苦悩。
よく考えられた素晴らしい音楽だと思います。


4. The Bishop (司教) / Empty Chairs At Empty Tables (カフェ・ソング)

これも地味ながら同じメロディーだった2曲。
冒頭、銀器を盗んだバルジャンを許し、施しを与える司教様が歌うメロディーです。

これと同じメロディーが久しぶりに登場するのが暴動後、一人生き残ったマリウスがカフェで歌う一曲。
今は亡き友人達とカフェで語り合った日々を懐かしみ、生き残ってしまった空しさを歌うシーン。

"友を思い遣る"
そういった意味で、共通的なシーンのようにも思えます。

長くなりましたので、続きはまた次回。
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by norlie | 2013-01-16 07:50 | Movie / TV | Comments(5)
Commented by barnes_and_noble at 2013-01-16 18:30
ミュージカルで観られたのですね。映画の中で登場人物が歌い上げる時、拍手したくなりませんでしたか?私はこの映画を観た時、何度か拍手したくなり、「あ、映画館だった。」と思い直しました。フランスの自由を皆で歌い上げるシーンが特に気に入りました。
Commented by pocchi-8 at 2013-01-16 22:53
永遠の名作として残りそうな映画ですよねぇ。
2度観にいって2回とも泣いてしまいました。
ジャン・バルジャンの、ファンティーヌの、エポニーヌの無償の愛に
涙、涙、涙。
スーザン・ボイルが歌って優勝した「夢やぶれて」とは違った
切実感が画面全部に現れていて、これまた素晴らしかったです。
舞台の「レ・ミゼラブル」を観ていないので比べられないのですが、
あえて舞台は観ないままの方がいいのかなとも思ったり・・・。

追記
「十和田湖冬物語」に行った方から下記のコメントが寄せられました。
ご参考までに。

「余談ですが、「十和田湖冬物語」震災の前の年に、女3人で行きまし  た。
 乙女の像の周りの雪灯篭の灯りは幻想的です。花火も素敵ですよ。
 乙女の像と十和田湖は真夏の昼とは、全然私には違って見えまし   た。
 なにせ、カイロ貼りまくり「、自分の身は自分で守る」、おばさん達3人 でしたから・・・(笑)」
Commented by norlie at 2013-01-19 22:00
> barnesさん、こんばんは!
おっしゃっていること、すっごくわかります〜!
一曲一曲が終わる度に拍手したかったです。
フィナーレの後は、スタンディングオベーションしたい気持ちでいっぱいでした。

エピローグの後、フィナーレの"Do you hear the people sing?"の大合唱が聴こえて来たときには、涙がぼろぼろでした。
それぞれの想いを抱えて散っていった人々が、フランス国旗を掲げて自由を歌うシーンは、何度観てもぶわーっと感動が押し寄せます。

レ・ミゼラブルは、ともすればとても重い話なのですが、ミュージカルだからこそ、歌がそれを希望に変えてくれているような気がします。
本当に心に残る一本になりました!
Commented by norlie at 2013-01-19 22:08
> ポッチ〜さん、こんばんは!
永遠の名作に残る映画、本当にそう思います。
私も八戸と横浜で2回観たのですが、どうなるかわかっていてもぼろぼろ涙がこぼれました。歌の力だなあと思います。

舞台を観ないままでも・・・と思ってしまうほど、映画の出来はすばらしかったですよね。
舞台だと、やはり大きな会場で観客席に声を届けるために、声量が大きく、迫力があるのがいいです。大合唱の迫力には鳥肌が立ってしまいます。
一方で、消え入りそうな声から割れるような声まで、声量の幅を大きくコントロールして、切実感を出せる歌い方というのは、映画ならではだなあと思います。
映画版ではどの歌も本当に切実な気持ちが表れていて、とても心が揺さぶられました。
歌と音楽を楽しめる舞台、ストーリーや演技も含めて心を揺さぶられる映画版。どちらも捨てがたいですね!

忘れられない一作になりました。何度でも観に行きたくなる作品です。

(次のコメントに続きます)
Commented by norlie at 2013-01-19 22:15
> ポッチ〜さん、十和田湖冬物語の情報、ありがとうございます!
やはり雪灯篭の乙女の像、見てみたい!
きっととても幻想的なんだろうなあと思います。
それに冬の花火ってどうなのだろうと思っていたのですが、いいんですね〜!うーん、ますます行ってみたいです!

十和田湖は私にとって一番大好きな湖。
四季折々の姿、全て好き!と言いたいところなのですが、実は冬の十和田湖だけは見たことがありません。
一度でいいから行ってみたいです。

とはいえ、きっと信じられないくらい寒いのでしょうね!
冬は八戸からあまり出ないので、さらに厳しい寒さに耐えられるか、想像もつきません。

2月の土日、何とか調整をつけて足を運べるといいなあと思います。
背中を押してくださるコメント、どうもありがとうございます!
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