ごらんあれが竜飛岬、北の外れと
関東で暮らしていると、たまに「青森に行ったことがある」という人に出会う。
中でも、思った以上によく出会うのが「竜飛岬に行った」という人たち。

「風が強くて、景色が雄大。他の場所にはない最果て感がある」
「荒涼としたあの雰囲気がまたとてもいいんだよ」
「夜、イカ釣り漁船の漁り火が見えて、とても胸に残るすばらしい景色だった」

老若男女様々だが、みんな口を揃えて「行ってよかった。すばらしかった」と言う。
青森に住んでいたときは、「はあ? 竜飛岬? あんなとこ、何もないでしょ?」という印象だったのに、どんどん自信が失せていき、いつしか「私も行ってみたい」と思うようになっていた。

というわけで、以前の私同様に「竜飛岬なんて行って、どうするんだ? 何もないんじゃないのか?」とモチベーションの低い家族を説得し、皆で津軽半島の先端へ行ってみることにした。

e0048530_17212533.jpg

青森市から国道280号線を北上し、蟹田から山道へ入る。
やがて津軽半島最北の町・今別町に入り、山道を抜けると、青い海が広がった。三厩湾だ。

青森県の中でもかなり外れの場所になるので、何と言っても人がいない。コンビニもない。
でもそれがまたとてもいい。
都会にはない、辺り一帯を包む静けさ、のーんびりとした時間の流れ、海の美しさ。

高台にある義経寺へ登って、三厩漁港を見渡すと、随分海が綺麗であることに気づいた。
北の海と言うと、黒々とうねる荒波のイメージだったが、今日は天気も穏やかで風も少ない。
海はところどころくっきりとエメラルドグリーンになっていて、綺麗さがうかがえた。

三厩湾を挟んで、奥のほうに尖岳や坊主岳などたくさんの山々が見える。
津軽というとどうしても田園風景のイメージが強かったが、それは弘前周辺の地形であって、津軽半島の北側は起伏の多い山々が連なっているんだと、車で走ってみるとよくわかる。

e0048530_17223534.jpg

三厩から海岸線を走り、竜飛崎へ向かう。
陸地すれすれまで山が迫り、その山と海との間を縫うように通る国道339号線の景色が素晴らしい。
既に、海の向こうに北海道が見えている。目の前に広がる北海道の地に、テンションが上がる。

ついに津軽半島最北の地・竜飛崎へ到着。
眼下には竜飛漁港が広がっている。
小さな岩礁をつなぐように堤防が作られた可愛らしい漁港を見下ろす高台に、竜飛岬はあった。

「龍が飛ぶが如く風が舞う」という風の強さに由来する竜飛岬。
この日は雲の多い快晴。
確かに岬から見える3台の風車は回っていたけれども、風は随分穏やかで、今日なら龍も眠っているんだろうなという感じの日だった。

竜飛漁港の奥、津軽海峡を挟んだ向こう側に見えるのが北海道の地・松前半島。
JRの青函トンネルは、まさにこの海の真下を通っている。
ここまで来ると、このままちょっと北海道に渡って、観光したくなってしまう距離だ。

e0048530_17213640.jpg

「国道なのに車が通れず、国道なのに階段」という珍しさで有名な"階段国道"。
テレビで取り上げられているのを何度か見たことがあったが、この階段国道は、竜飛岬から漁港に降りるためのものなのだそう。
公園にありそうな幅1メートルくらいの階段の脇に、国道339号線の標識。
三厩からの国道がこの階段まで続いているということらしい。

階段国道を降りると漁港へ行ってしまうので、そちらへは行かず、岬の高台のほうへ上がって行く。
先にあるのは白亜の円形灯台・龍飛埼灯台。
よく見る灯台は塔形をしているけれど、ここの灯台は円形で背が低い。
竜飛岬自体、海抜100メートル近くある急崖の上なので塔形にしなくても、見晴らしはとてもいい。

e0048530_17215731.jpg

竜飛岬は、津軽半島の先端に尖って張り出した岬なので、三方は急崖になっている。
海抜100メートルほどもあり、かなり高い。落ちたらひとたまりもない高さ。
台地の上は緑豊かで、紫陽花や野草、ススキが広がり、確かに荒涼とした岩場も見えるけれども、十分に自然の豊かさが見て取れた。

前方には北海道、右のほうには下北半島(仏ヶ浦も)くっきりと見える。
後方には津軽半島の日本海側の海岸線から小泊半島までが、乱反射する海にきらきらと輝いて見えた。
清らかで美しい景観美。まさに風光明媚という言葉が相応しい。

e0048530_1722632.jpg

津軽海峡には小さな白い漁船が多数行き来していた。
イカやマグロの好漁場なので、北海道や青森、あるいは様々な場所から漁船がやってきてはせっせと働いている。
夏から秋にかけてはイカ釣り漁船が出回るので、夕焼けの美しい日には、赤く染まった水平線に、遠くイカ釣り漁船の漁り火が灯っていく景色が見えるのだそう。
最果ての地で、何とも旅情を誘う絶景らしい。
うーん、見てみたい。

e0048530_17222151.jpg

松前半島の西側に小さな小島が見えた。松前小島だ。
本当ならばその後ろに大島も見えるのだけれど、この日は遠方が霞み、よく見えなかった。
それでも、茫々とした海の向こうにぽっかりと浮かぶ小島は、なんとも胸が高鳴る光景で、思わず船で漕ぎ出したくなる。
旅の高揚感を誘う風景だと思った。

e0048530_17224954.jpg

北国の紫陽花は遅い。とは言っても、さすがに7〜8月くらいには咲くので、9月はもうとっくに終わりの時期なのだが、岬の途中に、丁度綺麗に咲いていた紫陽花があった。
9月も半ば、こんな時期に青紫陽花に会えるなんて、なんだかとてもお礼を言いたいような気持ちになる。

丁度お昼に差し掛かり、岬の食堂で岩海苔ラーメンを頂いた。
あっさり醤油味のスープに、岩海苔がたっぷり、大きなホタテが2つ、美味しかった。

竜飛岬へ登る手前には、この地を一躍有名にした、石川さゆりさんの名曲『津軽海峡・冬景色』の歌詞を綴った歌謡碑がある。
そこには、つい押したくなるようなボタンが一つついていて、ポチッと押すと、この雄大な景色に響き渡るような大音量で、「ジャッジャッジャッジャーン!ジャッジャッジャッジャーン!チャラリラー」と前奏が流れ始め、あまりの音量にびっくりする人続出。
そして、耳に馴染んだあの名曲が、結構長い時間大音量で流れ続ける。もちろん止める術はない。
この日は日曜日。観光客も多かったようで、竜飛岬にはいつまでも、来る人来る人が押し続ける『津軽海峡・冬景色』が鳴り響いていた(笑)。

ここに何もないなんてどうして思ったんだろう。
一つの崖の上から、どちらを向いても違った土地が見え、違った景観が見える。
洋々と揺蕩う津軽海峡。高台から、いつもより近くに広がる空と雲。
風が作った岬には、"最果て"という言葉の響きに負けないくらいの風情と、旅情を誘う景観があった。
[PR]
by norlie | 2014-10-25 17:21 | ぷらっと青森
<< 名道・竜泊ラインから十三湖へ 車で巡るみちのく潮風トレイル(... >>