海と橋と子午線の町@兵庫・明石
土曜。ただ友人に会うという目的のために、日帰り旅に出た。
行き先は、初めて訪れる場所。兵庫県の明石。

早朝、新横浜より「のぞみ」に乗って、新大阪で乗り換える。
新快速は神戸までしか行ったことがない。
大阪のビル風景を抜けて、港町神戸へ。ここまでは、東京から横浜に抜けるのと、気分はあまり変わらない。
周囲で聞こえる会話のイントネーションが関西弁だったり、座席の作りが乗り馴れた東海道線とはだいぶ違うことなんかが、少しだけ心細い。

神戸を過ぎて少し走ったところで、突然視界が大きく開けた。
空が広く、光がきらきらと溢れる。海に出たのだとわかった。

新快速が、神戸以西でこんなに海に近いところを走るなんて思いもしなかったので、ほとんどサプライズのようなできごと。
心細さはどこかへ消えてしまって、一気に胸が高鳴った!
絶好の晴天の下、波打つ海面がきらきらと煌めいて、遠くに船が見える。
窓に張り付く子供さながら、景色に見入ってしまう。

須磨の海景色に魅入られながら、自然と笑顔になって、夢中で外を見続けた。
そうしたら、やがて長い長い吊橋が見えてきた。
近づくにつれて、その見たこともないようなスケールに唖然となる。
長い!大きい!高い!
見上げるほどに高い二本の主塔。まっすぐに、ストンとおちるハンガーロープ。
青空に映える白い曲線と垂線がすうっと延びて、真下に大きな海峡が広がる。
陸と陸をつなぎ、海を渡す架け橋。その寛容な風景。

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明石駅で待っていてくれた友人の姿を見て、密かに安堵する。やっぱり少し、自分は心細かったらしい。
「元気だった?」「どうしてた?」—聞きたいことはたくさんあるのに、一番最初に、電車で見た風景のことを話す。興奮気味の私に、友人が落ち着いた声で「明石海峡大橋って言うんだよ」と教えてくれた。

魚の棚商店街でご飯を食べて、近況を語り合う。
あの橋と海をもっと見たい—そうリクエストした私の思いつきに、彼女が日程をアレンジしてくれた。
隣駅の朝霧へ移動し、大蔵海岸という場所へ連れて行ってもらう。
大興奮で砂浜を走り回る間、彼女は辛抱強く待っていてくれて、さすがに疲れた私が木のベンチに戻り、二人で腰掛けて、海と橋を眺めながらぽつりぽつりと語り合う。
この間の取り方が、私が好きな彼女のリズム。

「あの橋の向こうは四国なの?」と聞く。
神戸より西のことはほとんど知らない。地図がぼんやり頭に浮かぶくらい。
そんな私の間抜けな質問に、苦笑しながら「あれは淡路島だよ」と教えてくれた。

大きな橋の向こうに見える、緑の淡路島。
あれが話に聞く淡路島というものなんだ。知らなかった!

巨大なスケールの橋があって、その向こうに島が見える。
こんな風景、見たことない。
私は特別、橋好きの人間ではない。レインボーブリッジや横浜ベイブリッジは毎日のように見ているけれど、夜景が綺麗だなと思うくらい。だから、自分自身、この橋と島の風景にこんなに感動していることが意外だった。

まったりと緩やかな時間を過ごして、「そろそろ行こうか」と立ち上がる。
この朝霧と言う場所は、彼女が生まれ育った場所。
欲目なしに、いいところだなあと思った。

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その後は明石天文科学館へ。
明石に来ると決めたとき、リクエストしていた場所だ。
私がよく通っていた八戸のプラネタリウムより、ずっとずっと大きな天球。
驚いたのは、50分間全部、解説員の方がナレーションをしてくれること。
プラネタリウムは、映画のようにプログラムを流すものしか知らなかったので、感嘆した。
プログラムをただ見ているのではなく、皆で一緒に星を眺めているような一体感があった。解説員さんの声が、皆をつなげてくれている。

はじめに、町明かりに照らされた夜空が映し出された。
ぽつりぽつりと、三等星くらいまでしか見えない。
プラネタリウムってこんなものだったっけ?と思っていたら、解説員の方が「目を閉じてください」と言った。
静かに従う。

しばらく後、「目を開けてください」という声に従って瞼を上げる。
見上げると、先ほどのとは別物の、溢れるような星の海。
「これが町明かりのない夜空です」と解説がつく。なんて粋な演出!

あっという間の50分を過ごし、館内を少し見て回る。
子午線の町ならではの「時の展示」や、どこの科学館でも昔から決まって胸が高鳴る「惑星のコーナー」などを見て回る。
天王星の衛星の多くが、シェイクスピアの登場人物の名前であることを今更ながらに知った。
本当に宇宙の世界は奥が深い。考えだしたら、しばらく帰ってこられなくなるくらい。宇宙なだけに。

ひとしきり展示を楽しみ、14階の展望フロアから、また明石海峡大橋と淡路島を眺めて満足する。
真下に綺麗な神社が見えたので、次はそこへ向かった。高台にある社。柿本神社というのだそう。

その後は、友人のお家にお邪魔し、お茶を飲みながら楽しく語らう。
耐えない会話に、時間が経つのもあっというまで、「ああ、私はこれをしにきたんだ」と実感する。
彼女に対面する。そしてたくさん語り合う。それが今日の一番の目的。無事達成できたと思う。

帰途につく前、やはり明石に来たからには!と、明石焼きを食べに連れて行ってもらった。
メニューを見てまず驚いた。「明石焼きってどこにも書いてないよ?」と質問すると、彼女が「明石の人は"玉子焼き"っていうんだよ」と教えてくれる。
確かにメニューには『玉子焼』と書いてあった。

食べてみてびっくり。見た目はまるでたこ焼き風なのに、中身はふわっふわで全く別物だとわかった。
明石焼きって、たこ焼きをお出汁につけて食べるものとばかり思っていた…。
でも、口の中で、お出汁を吸い込みながらふわふわとろけていくこの丸い食べ物は、大阪で食べたたこ焼きとも全然食感が違う。
お出汁が美味しくて、それを十分に吸い込んで溶けていく玉子焼も美味しくて、ぱくぱくと箸が進む。
あっというまに14個を食べ終わり、最後の一つをゆっくり味わって頂いた。

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西を訪れるとき、自分に由来しない土地を訪れるのだという、なんとも言えない高揚感を覚える。
勝手知ったる東日本とは違い、右も左も、土地も文化もわからない。
完全に文化を異にする海外と違って、自分も日本人なのだから馴染みたいという気持ちがある。そして、馴染めるだろうかという一抹の心細さも覚える。
だけど、縁あって出会った友人達を育んだ場所、あるいは育んでいく場所なのだと思い出すと、ぐっと勇気と親しみが湧く。
町が、彼らの人柄を表しているような気がして、その気配に背中を押される。

神戸から西へ、一歩踏み出した明石の土地。
また一歩、また一歩と、足を伸ばしてみたいなあ。
そうしていつか、「関西も四国も中国も九州も、結構わかるよ!」と言えるようになりたい。
日本各地の色々な良さを、語れるようになりたいな。
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by norlie | 2011-09-11 23:49 | ぷらっと関西
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