梓川のほとりで出会ったもの@長野・上高地
河童橋へ戻ってきたのが昼前の11時。
山歩きを存分に楽しんだ後は美味しいものが食べたくて、白樺荘のレストランに入った。
といっても食べたのは軽食2つ。アップルパイとコロッケ。

実は、明神池に行く前、売店で"コロッケ"という文字を見てから無性に食べたかった一品。
ただ、朝8時にはまだ準備前で、コロッケはまだ用意されておらず、かといってソフトクリームは食べる気がしなかったので、少しお腹をすかせたまま明神池に向かったのだった。

そんな念願のコロッケは、とても大きいジャンボコロッケ!
信州和牛のひき肉たっぷり、甘みのある味。んまーい!
少々がっつくように、青空の下あっという間に頂きました。(そして写真を撮り忘れました)

アップルパイもまた、リンゴの酸味とまろやかなバターがとてもマッチしていて、上品なお味。
意外と大きく、それもまた満足。
古今東西、リンゴのお菓子は大好きです。

そうして、11時半頃にはお腹も満たされ、こうなったらバスの時間までとことんゆっくりしようと腰を下ろしたのは梓川のほとりの木陰。

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木陰に座って、何をするでもなく、ただ山を見るその贅沢。
清涼な山の空気、涼やかな川の流れる音、遠くの山々のコントラスト。
最上の場所で、ぽっかりと空いた空虚な時間。それは、一見空虚ながら、他では味わえない濃密な癒しの時間。

1時間くらい畔に座っていると、たくさんの人が周囲を通り過ぎた。
ある元気なご婦人の集団は、私には少し聞き慣れない、だけどとても馴染みやすいやわらかな方言があった。
「〜やなあ」という語尾で関西のほうかと思ったが、都会で良く耳にする関西弁の音階より、もっと抑揚が柔らかい感じがした。三重から岐阜あたりだろうか。

実はこの日、私は歯医者の予約をしていて、それが前日突然この旅を決めたものだから、予約を変更してもらわなければならなかった。
診察券に書いてある電話番号に電話し、予約を変えてもらった後、うっかり診察券をしまおうとしたら、手が滑った。
あっと思ったときにはもう遅く、診察券はトントンとリズミカルに傾斜を跳ねて、音もなく川に落ちて流れに吸い込まれていった。

しまったー!
不注意で、川に物を捨ててしまった!

診察券は再発行してもらえばよいが、こんな綺麗な川に紙を落としてしまった自分の不手際に呆然とする。
そうしたら、後ろで談笑していたそのご婦人たちが「あらあ〜、なんか流れていったなあ」と笑い出す。
「は、はい、診察券を落としてしまいました」
「あらあら、それは大変。お嬢さん、診察券落としたったって。この川入らな」
「あははは、こんな流れのいい川、あっちまで渡るのやって無理やなあ。きっともう大正池のほうまでいってるなあ」
ご婦人たちが口々に笑い出す。ちょっとノリが良くて、朗らかで人懐っこい。

「綺麗な川やから、病気も流されていったなあ、きっと」
楽しそうに言って、また笑う。
いえいえ、その診察券は歯医者さんですので、病気という訳ではございません。
そして、予約していたのも虫歯治療ではなく、歯のお掃除でしたので・・・。
なーんて、野暮なことは言わず、ご婦人達の陽気なおしゃべりを楽しんだ。

そんなご婦人たちも、また去り、次は家族連れがやってくる。小さな子供が4、5人。親戚のようだった。
私のすぐ目の前を歩くので、ときどき足を避けてあげた。
「すごーい、川きれい!」
「水入れる!」
すると、おじさんらしき男性が「そんなに入ると靴が濡れるよ」と止める。
渋々川から離れた子供を差し置いて、crocsを履いた子供達がじゃぼじゃぼ川に入ると、やがてその子も靴のまま、浅瀬にポチャリと足を浸す。
「濡れちゃったー!」

靴脱げばいいのに・・・と冷静に観察しながらも、彼のとても誇らしげで嬉しそうな顔を見たら、ああ、これでいいのかと思った。
最初に止めたおじさんも笑っている。
子供達の遊ぶ水が私の服に跳ねる。水が服を染みて、お尻もひんやり冷たい。
きっと今、私はとても誇らしげな、満足した顔をしてるんだろう。

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穂高連峰の上に、小さなドーナツのような白い雲ができた。
それがゆっくりと煙り、形を変えて、やがて霧散していくまでゆっくりと眺めた。
雲が消え去った頃、バスの時間はやってきて、この一日の大冒険をじっくり噛み締めながら乗り込んだ。

何度でも来たい場所に出会った。次はいつ来ようかなと考えるのが待ち遠しい。
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by norlie | 2012-08-17 21:10 | ぷらっと甲信越・北陸
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