夏山の大冒険@青森・八甲田
今回の帰省で是非やってみたいと思っていたことがある。
それは、八甲田山へ登ること。

まずは、焼山方面から夏の八甲田ドライブ。
山道に入る前の高原は、津軽方面へ向かうドライブでは必ず通る場所で、特別好きな場所でもある。
牧草地になっており、だだっ広い高原を半円球の空が覆う風景。
小さな自分の身体の中に、高原の風が吹き抜ける。
空の広さの分だけ、心が広がる。
遠い彼方まで見渡すように。

天を仰げば、見たこともないような白雲。
いつもの数倍濃い緑の上に、山々の稜線がくっきりと際立つ。
それは自分が想像していた夏の八甲田よりも、ずっとずっと素晴らしかった。

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登山ルートの出発点は田茂萢岳のロープウェイ山頂駅。
そこから、麓の酸ヶ湯温泉や城ヶ倉温泉まで降りることになる。
まずはロープウェイで山頂駅へ。

山頂駅からは3つのルートが整備されており、最も簡単なのは八甲田ゴードライン。山頂駅の周辺、田茂萢湿原だけ散策するコースで、30分〜1時間で歩くことができる。
そして、難易度中くらいにあたるのが、ビギナー向けの登山ルートである毛無パラダイスライン。田茂萢岳から上毛無岱、下毛無岱を通るルートで、2時間半程度かかるらしい。このルートでは、田茂萢岳より高い山々(大岳、井戸岳、赤倉岳)は通らないので、完全に下りがメインになる。
そして、本格的な登山ルートになるのが大岳登山コース。大岳、井戸岳、赤倉岳などの最高峰を通って行くルートで、4時間以上かかるとのこと。

さて、どのルートを行くか。
最高峰の大岳に登ってみたい気持ちはあったが、登山経験のない自分がいきなり登るのは不安がある。
そして、酸ヶ湯温泉で待たせている車(と父)もちょっと気になる。

というわけで、ビギナーはビギナーらしく、毛無パラダイスラインを行くことにした。
眼下に広がる青森市と陸奥湾の景色に背中を押されながら、出発。

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さて、"八甲田山"と言われるが、実際にはそのような独立峰は存在しない。
幾重にも連なる火山群の総称で、"八甲田連峰"というほうが正しい。

最高峰は大岳。
その周りに、ほぼ同じ高さの赤倉岳、井戸岳、小岳、高田大岳など、15以上の山々が連なる。
青森県の最高峰は弘前の岩木山だが、連なる山々の美しさや初夏のブナの新緑、秋の紅葉の響宴、そして点在する温泉・・・と、見所の多さでは八甲田が優る。
また、青森きっての観光地である十和田湖、奥入瀬渓流にも近いことから、年間を通してたくさんの観光客が訪れる名山でもある。

そんな山なのだから、きっと歩きやすい登山道が整備されているのだろうと期待してきた自分。
特に、つい最近訪れた上高地の遊歩道の歩きやすさ、美しさを覚えていたので、あれほどではないにせよ、結構な歩きやすさを期待してきたのだった。

が、実際のところ・・・
薮!
ぬかるみ!
岩!
そして薮!
・・・の連続。
あれ、道は? 整備された歩道は?

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毛無パラダイスライン。
どんなパラダイスかと期待してきたら、もはや登山道というより獣道だった。
頭の高さまで覆い隠す薮を、手でかき分けながら進む。
標高が高いので、木はほとんどない。自分と同じ高さくらいのアオモリトドマツがぽつりぽつりと見える。
かろうじて、足下にはイノシシ一頭が通れるくらいの道があるだけ。

途中、肩の高さくらいの位置に咲いたアザミに、蜂が群がっていた。
普段、虫が苦手な自分は、蜂には決して近づかない。隣を歩くなんてもってのほかである。
だけどここでは、両側に生茂る薮のせいで、他に通れる場所がない。

ここはもう人間の世界ではないのだ。虫のほうがホームである。私達のほうがアウェイなのだから、殊勝にお隣を通らせて頂くしかない。
「お願い刺さないで〜」と、群がる蜂をドアップで見ながら、すれすれを通り過ぎる。
蜂たちは花の蜜を集めるのに集中していて、3センチ先の私の頬になんて見向きもしなかった。
 —よかった、この子たちは、花の蜜が好きなだけのおとなしい蜂たちだ。
蜂の背中のふわふわした毛まで見えて、丸っとしたからだがなんかちょっと可愛いかもと思ってしまった。

山頂を出て1時間くらい歩いた。
まだ、空も見えないような薮が続く。
獣道でも険しい岩場というわけではないので、コンバースのスニーカーでも歩くのに苦はない。
どちらかというと、この薮をかきわけるほうが骨が折れる。

毛無岱。
"毛が無い"と書くくせに、毛(薮)だらけ。

「けーなしたいには けーがいっぱい (毛無岱には毛がいっぱい)」
「けーなしたいは ふっさふさ (毛無岱はふっさふさ)」

心地いい疲労感と、山歩きの高揚感で、即興で作った歌を大声で歌いながら進む。
完全に、歌う変な山女。でも、私なりに考えてことである。
クマ避けの鈴を持ってこなかったので、どこかにいるかもしれないクマに「私達はここよ! だから来ないでね」と伝えるために大声で歌いながら歩いたのだった。

「けーなしたいには けーあるじゃん (毛無岱には毛あるじゃん)」
「けーなしたいは けーありたい (毛無岱は毛有岱)」

元気に歌いながら薮の中を歩き続ける。
するとあるとき、前触れも無く、突然薮が開けたのだった。
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by norlie | 2012-09-08 19:38 | ぷらっと青森
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