黄金色の世界へ@長野・上高地
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紅葉を"黄葉"と書いたことはなかったけれど、上高地の秋はこの言葉で表すのが相応しい。
涼しい風が吹き始め、日に日に秋めいてくる首都圏とは異なり、ここはもう晩秋の気配が漂う。

「また、来ました」
明神岳に向かってしみじみ一礼。

8月初めに訪れた松本・上高地。
まさか2ヶ月と経たないうちに再び来ることになろうとは。
(そう決めたのは他ならない私自身だけれども)

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八甲田や八幡平といった北東北の山々と、ほぼ同時期に色付くのが日本アルプスだと知ったのは最近のこと。
北国では10月後半になると山々の紅葉が終わり、色付きが野や里へ駆け下りる。
そして、標高約1500メートルの上高地はそれとほとんど同時期に黄葉が始まるのだそう。

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岩肌露にそびえ立つ穂高連峰。
白い河原がとても美しい。
つい先日この景色を見たばかりだったのに、その免疫はどこへやら。
やっぱり何度見ても、初めて見たときのように感動する光景だと思う。

3000メートル級の山々に囲まれた上高地はいわゆる盆地に相当する。ところがその標高は、夏に私が訪れた八甲田山の最高峰・赤倉岳と同等。(赤倉岳のほうが数十メートル高いくらい)
田茂萢岳に至っては、200メートルくらい低い。
そう考えるといつも溜め息が出てしまう。今立っているこの場所は、あの山頂と同じ高さだなんて。

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上高地の黄葉の中心となるのがこのカラマツという木。
針葉樹とは皆常緑なのだと思っていた私は、黄色に染まって落葉するマツがあるなんて初めて知った。
黄金色と言えば銀杏だとばかり思っていたけれど、今度からそのカテゴリにカラマツも入れようと思う。
高く濃い、秋の青空に黄金色がよく映えて、ひらひらと落ちてくる針のような葉がきらきらと光を反射する。
こんな黄葉の風景を見たのは初めてだ。

このカラマツは、天然では宮城・蔵王周辺から関東、中部の高山帯にのみ分布する木だとか。
夏に訪れたとき、シラビソと並んで「北東北と植生が違う」と実感させられた木。

上高地を訪れる度になぜかアメリカ北部の風景を思い出す。
その原因がこのカラマツやシラビソのような亜高山帯の針葉樹林の豊富さにあるように思う。
それから岩肌を見せる日本アルプスの山々。
カナダやアメリカのロッキー山脈付近を少しだけ思い出してしまうなあ。

そういえば、カナディアンロッキーに、"Larch Valley"というトレイルがある。
レイク・ルイーズのことを調べていたときに知ったのだけれど、そこの見事な黄葉もまたカラマツによるものらしい。
"Larch"とはカラマツのことだったのだ。

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この場所、田代池は前回訪れなかった場所。
大正池から河童橋に向かう道を、少し逸れたところにあるのだけれど、気づかずにそのままスルーしてしまったのだった。
夏の来訪後、そういえば池が一つなかったなあ・・・と気になっていたのだけれど、秋の再訪で見つけることができた。

点々と立つカラマツの間を緩やかな流れが蛇行する風景。
午前中に訪れると、正面の山から降り注ぐ光が遠景を白く暈して、とても幻想的だった。
公式サイトでは『箱庭のような風景』と称されていたけれど、なるほど確かに、黄金色の針葉樹と小川、その中を泳ぐ岩魚達の景色は、上高地の神様が作ったささやかな庭園のようにも思えた。

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黄葉中心の上高地にも、ところどころに真っ赤な楓が顔をのぞかせていた。
中には黄と赤の混合色のような葉を持つものも。
周囲のカラマツに感化されたかのよう。


さて、ここからは前回8月に訪れたときに撮った風景と、ほぼ同じ景色を再び写真におさめたので、2つの季節を比べてみようと思う。意識して撮ったわけではないので、少し角度などがずれているのはご愛嬌。
活き活きと輝くような緑の景色が、たった2ヶ月で黄金色の景色に変わったのだと実感。
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上が8月初め、下が10月下旬の景色。河童橋から臨む穂高連峰。
並べてみると分かるのだけれど、木々の色だけではなく、水の色まで違うことに驚いた。
夏は、清冽な梓川が周囲の濃緑を映して、より青く見えている。
一方、秋の梓川もまた環境色を反映して、今度は薄褐色の川になっている。

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次は、田代湿原。
夏は柔らかな黄緑色だった湿原は、すっかり冬芝色に。
だけどそのかわり、周囲の木々の褐葉が美しい。
遠くそびえる穂高の山々も、夏よりずっと岩肌が露出して見えるみたい。

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こちらは明神池。
黄葉が美しいけれど、こちらは夏の景色のほうが好きかもしれない。
すっくと立つ樹木の濃い緑と、褐色の池の対比が美しいから。

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明神橋と明神岳。どちらも圧巻の風景だと思う。
明神岳の賑やかな紅葉はパッチワークみたいで素敵だなあ。
Stanley Horowitzという人物の言葉"Winter is an etching, spring a watercolor, summer an oil painting and autumn a mosaic of them all."(冬はエッチング、春は水彩、夏は油絵、秋はそれらすべてのモザイクだ)を思い出した。
この言葉がずっと前から好きなのだけれど、Stanley Horowitz氏が何者なのか私は知らない。ずっと知りたいと思っている。

天気一つ、時期一つで、景色はまるっきり違ったものになる。
だから自分は同じ場所を何度も訪れるのが好きなんだと思う。
たくさんの場所を広く浅く知るよりも、一つの場所の多面性を深く知りたいと思う。
そういう考え方は、自分の人間関係にも共通しているのかもしれない。

再びの場所、上高地。
三度目もまた、そう遠い話ではないかもしれません。
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by norlie | 2012-10-28 21:38 | ぷらっと甲信越・北陸
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