Les Miserables / レミゼの音楽 2
前回からの続き。
レミゼの音楽について語ります。 5. One Day More 後半部のオールキャストで歌われる"One Day More"では、革命前日の登場人物それぞれの思いが歌われます。 そのシーンに相応しく、この曲はいくつものメロディーが重なり合って一つのメロディーになっていく、とてもミュージカルらしい曲です。 歌い出しのバルジャンは、前半部の"Who Am I ?"(自分の代わりに捕まった囚人を助けに行くかどうか、葛藤するシーンの曲)のメロディーから始まります。 そこに、同じく前半部の一曲"I Dreamed Dream"(夢やぶれて)のファンティーヌのメロディーが重なってきます。マリウス、コゼット、エポニーヌがそれぞれの恋心を歌うシーンです。 そして、恋心から戦いへマリウスの心が切り替わると、リーダーのアンジョルラスが"One Day More"のメロディーで歌い始め、二人のコーラスへ。 そして、再びバルジャンの"Who Am I ?"のメロディーに戻ると、今度はジャベールが「革命まであと一日。学生達を迎え撃つ準備はできている」と、さらにメロディーを展開させます。 そこでひょっこり顔を出すのが、テナルディエ夫妻。 前半部で歌われた"Master of the House"(テナルディエ夫妻登場時の曲)と同じメロディーで歌います。 夫妻が登場するときはいつもこの曲。道化らしいユーモラスなメロディー。 そして曲のサビ、"One Day More"の合唱へ。 それまで歌って来た各キャラクターのメロディーが同時にコーラスで歌われた後、全員が同じ一つのメロディーを大合唱します。 それぞれの"革命前夜"。 異なる思いを抱いた人々が、革命と言う一日へ収束していく、象徴的な一曲です。 6. Fantine's Death (ファンティーヌの死) / On My Own / Epilogue 前半部の終盤、ファンティーヌの死のシーンで登場してくるメロディー。 このメロディーが再登場するのが、後半部でエポニーヌが歌う"On My Own"。 『レ・ミゼラブル』の劇中歌でも、"I Dreamed Dream"に次いで人気の高い一曲だと思います。 映画でエポニーヌを演じるサマンサ・バークスは、舞台版『レ・ミゼラブル』のロンドン公演でも同役で出演している舞台女優さんです。 その歌声は、私が持っている2010年版の25周年記念CDの"On My Own"と同じでしたが、歌い方はやはり映画と舞台では少し違っていて、それもまた面白い発見でした。 この"On My Own"の切ないメロディーは、さらにラストの見せ場で再び登場します。 バルジャンが天に召されるシーン。コゼット、ファンティーヌ、バルジャンが歌うのです。 愛を知り、娘を愛し抜いたバルジャンの思いは、最後の最後にしっかりとコゼットに届きます。 娘と生きられなかったファンティーヌの叶わぬ夢や、エポニーヌの叶わぬ恋を歌う曲と捉えられることが多い一曲。 ですが、私は敢えて、このメロディーは純粋に愛する人を想うシーンで使われる曲だと捉えています。 ファンティーヌから娘への母親の愛。 エポニーヌのマリウスへの恋人の愛。 バルジャンとコゼットの親子愛。 多くの人を魅了するのも分かる気がします。 7. Do You Hear The People Sing ? (民衆の歌) / Finale (フィナーレ) 「人々の声が聴こえるか?」と歌われる革命の歌。 暴動の最初でアンジョルラスやマリウス、学生達によって力強く歌われる、戦意を鼓舞するようなメロディーです。 この曲は、ミュージカルでも映画でも、ラストを締めくくるフィナーレで再登場します。 全く同じ曲のように聴こえますが、実は歌詞が少し変わっています。 劇中歌でアンジョルラスらが歌った際は、「怒れる者の歌が聴こえるか?」「 戦え! それが自由への道」と、革命へ導くような歌詞になっていますが、フィナーレでは「どんな闇夜も明ける日は来る」「彼らが夢見た明日が来る」と、希望に満ちた歌詞になっています。 愛情や苦悩、優しさや切なさ、苦しみや絶望。 多くの人々の思いが生まれては消え、次の時代へ繋がっていく。 全ての人が精一杯自分らしく生きたこと。言葉通りの惨めさでは決してなかったこと。 「私達の歌が聴こえるか?」 この歌は、『レ・ミゼラブル』という劇から私達への問いかけのようにも聴こえました。 登場人物一人一人の声を、何一つ聞き逃すことなく感じてほしい。 そんな『レ・ミゼラブル』というミュージカルから観客一人一人へのメッセージが込められているのかもしれません。 こういった音楽の観点、あるいはヴィクトル・ユゴーの原作の観点、フランス革命の歴史の観点、あるいは出演する俳優達の歌い方の観点。そういった様々な点から語っても語り尽くせないレミゼの世界。 いつかロンドンの舞台で本場の"Les Mis"を観るのが私の夢の一つです。
by norlie
| 2013-01-19 18:53
| Movie / TV
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