新緑さんぽ - 長谷寺 -
4月、桜が過ぎた首都圏では明るい若葉が芽を出して、あっという間に新緑に包まれる。
電車から外を見ていると、それはもう一週間くらいのうちに街中が萌葱色に芽吹いていく様がわかり、ああ、旅に出なくてはと心をくすぐられる毎日。

海と山を擁する、ここ鎌倉はその様子が顕著にわかる。
赤茶けた色合いだった山々があっという間に新緑に包まれる姿に、冬よりもずっと外へ足が向く。

見事な新緑のカーテンが境内を彩っていたのは、花の寺・長谷。
若葉の向こうにもみじの朱。三角屋根の寺務所が可愛らしい。柔らかな春風が葉を揺らし、さわさわと心地いい葉ずれの音が満ちる。

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長谷寺は明月院と並ぶ紫陽花の名所として有名だが、4月の境内で最も目を引くのは牡丹の花。
明るい若葉色にビビッドな色合いがよく映える。

なごみ地蔵の手には誰かが持たせたのだろう、椿の花。
粋なことをするなあと思いながら、地蔵スマイルを見ていると不思議と自分の心も和んでくる。

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「そういえば前に友達と山手を散歩したとき、花がとても綺麗に咲いていて、"このバラ、きれいだね"って言ったら、"バラじゃなくて椿だよ”って言われた」
私はバラと椿も見分けられないのかって、ちょっとショックだったよと苦笑しながら話す。
椿と言えば、中央の立派な花芯があるお花と思っていたのだが、バラのように幾重にも花びらが折り重なった椿もあるのだとそのとき初めて知ったのだった。
「それなら、牡丹と芍薬もよくわからないときがある」
友人が笑って言う。"立てば芍薬、座れば牡丹"と口ずさむので、その続きは何だっけと思いながら歩く。

「似ている花ってあるよね」
「梅と桃。桜は分かるのに」
「アヤメとショウブも見分けつかないかも」
「紫の水仙とアヤメもごっちゃになるときがあるよ。百合・・・はさすがにわかるか」

そこで、ああ、そういえば続きは"歩く姿は百合の花"だったと思い当たる。
よく知っているようで見分けられない花を二人で挙げながら境内を歩いた。
「花がわかるようになりたいね」
二人とも満場一致の結論だった。

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長谷寺は海を臨むお寺である。
山に張り付くようにお寺の階段が続くため、境内を歩いていると自然に上へ上へと向かっている。
そして一面に海が広がったとき、こんなに上まで来ていたことにびっくりする。それが長谷寺の魅力。

緩くカーブした由比ケ浜に、真っ青な海が入り込む。
ひしめき合った背の低い町並みは、思い描く海辺の町そのもの。
こういう場所から海辺を一望するのはあまり私の経験にはないはずなのに、どこか懐かしい感じがするのは、なぜだろうか。

花と海と山の寺、長谷寺。
名残惜しいと思いながら、心地いい春風に背中を押されて次の場所へと向かうことにした。
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by norlie | 2013-04-29 10:06 | ぷらっと鎌倉・湘南
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