畳の向こう - 浄妙寺・喜泉庵 -
お気に入りの茶室を是非友人に見せたくて、浄妙寺の喜泉庵に連れて行くことにした。
ところが、着いた時刻は16時15分。お寺が閉まるぎりぎりの到着だった。

「あと15分で締めてしまいますけれど、どうなさいますか?」と茶室の方に尋ねられ、困ったような申し訳ないような気持ちになる。
この茶室にはいつも午前中に来るので、私もつい閉館時刻を知らなかったのだった。

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畳の向こうに、枯山水の庭の緑が見える。傾いた日に照らされて、心なしか緑も淡い。
申し訳なさいっぱいで、友人に「どうする? また今度にする?」と尋ねると、友人は笑顔で、「すごく素敵なところだから15分でも寄っていきたいです」と言ってくれた。
その様子が心からその場所に興味を持っているふうで、15分を悔やむより、持てる時間を存分に楽しもうと言ってくれたのがわかった。

生菓子と抹茶を頼んで、緋毛毯に座る。
時間を気にして心を砕くよりも、目の前のこの景色と、そしてこのお手前に五感を傾ける。
考えるということから解放されれば、些末な社会の制約なんて越えて、人は随分と身軽になれるのだなあと思う。

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その15分は文字通りあっという間のような、一方で30分くらいそこにいられたような充実した時間だった。
帰り際、玄関で靴を履きながら「良い場所を教えてくれてありがとうございました」とお礼を言われた。
また絶対来ます、と言ってくれるので、連れてきてよかったなあと心から感じた。

お礼を言うのはこちらのほう。
素直で大らかな彼女の振る舞いに、つまらない気負いを取り払ってもらって、随分とリラックスさせられたのは私自身だったから。
なんてくどくどと言うのは野暮だったので、「私も来られて嬉しかった。ありがとう」とだけ伝え、茶室を後にした。
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by norlie | 2013-05-03 14:49 | ぷらっと鎌倉・湘南
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