日暮れの過ごし方@江ノ島
江ノ島展望台の麓に着いた頃、ちょうど日も傾き始め、陽光が反射して光の海のように輝いていた。
サムエル・コッキング苑で花を愛でた後は、島の反対側へ降りて岩屋洞窟を探検する。 閉館間近の17時、岩屋洞窟を出た頃にはすっかり日暮れに差し掛かっていた。 大学の頃、友人達と江ノ島へ来たときは島の反対側まで来たことはなかった。 昨年秋、一人で夕暮れを見に来たときもまた、展望台のところで引き返したので、実はここまで来るのはこの日が初めてだった。 島の反対側、岩屋洞窟の前には稚児ヶ淵という磯遊びのできる場所がある。 この日の夕暮れ、私が訪れた時間帯は満潮が近かったため、徐々に波が岩場を浸食し、浅く冠水していた。 平坦な場所に薄く満ちた海水は、真っ黒な岩場を鏡代わりにして空を映し出していた。 釣り人が一人、そこを端まで歩いて行くと、まるで海の上を歩いているように見えるのが面白い。 一歩足を踏み出す度に波紋が広がり、鏡の中の空を揺らす。 良い時間に来たなあと思いながら、しばらくそれを眺めることにした。 たっぷり1時間くらい遊んで、元来た道を引き返した。 展望灯台から稚児ヶ淵までの小道は、いかにも島の小道といったふうで、急な階段の脇に緑が生い茂り、眼下に海を臨むことができる。 時折、雰囲気の良い食事処や古民家カフェがあるので、否が応にもお腹が空いてきて、ついに"あぶらや"という甘味処でひと休みすることにした。 甘味処だけれど、私が注文したのはところてん。 夏になるとどうしてもところてんに惹かれてしまうのは昔からだ。 友人はオレンジのシャーベット。ひんやりしていて美味しそう。 このあたりのお店は、閉店時刻を「日暮れから30分後」としているところが多く、季節に応じた閉店時刻も島時間だなあと思うことしきり。 再び展望灯台へ戻ってきた頃には、いよいよ日暮れが近づき、太陽が地平線に触れるか触れないかというところまでに迫っていた。 まるで夕日に吸い込まれるような雲と、展望灯台の人工的な影がとても印象的。 魔法のような時間に身を委ねながら、一心に夕日を眺めて時を過ごす。 夕日の左側には富士山。 時期によっては、この夕日が富士山の頂上に沈んで、ダイヤモンド富士を見られる名所でもある。 太陽は、沈めば沈むほど真っ赤に染まっていく。 最後、地平線にわずか3分の1くらいを残して沈む頃には、赤い蜜が大地に溶けていくように見えた。 まるで線香花火の玉が最後に落ちて、夜の地面に溶け込んでいくかのよう。 最後の一瞬は本当に速い。沈めば沈むほど、沈む速度が速くなっていくような錯覚を覚えた。 朝から来て、夕暮れまでたっぷり遊ぶ。 日が沈んだら、皆散り散りになって、うちへ帰ろう。 家へ帰れば、家族と食卓が待っている。 それは子供の頃の幸せな記憶。その断片を呼び起こすような、海辺の夕暮れだった。
by norlie
| 2013-06-06 07:07
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