初夏の花巡り - 十和田・鯉艸郷 -
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この姿を見て、「あ、"立てば芍薬"」と思った。
樹木の一種である牡丹に対して、芍薬は草花の一種。
自分の茎ですっと立ち、ショッキングピンクの大きな花を自ら空へ向ける草花。
この凛とした艶やかな様子が、美女の立ち姿に例えられるのも納得がいく。

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十和田市の北側にある手づくり村・鯉艸郷(りそうきょう)は、個人の農家が始めた観光農園。
7ヘクタールの広大な土地に、花菖蒲園、ルピナス園、芍薬園をはじめ、ブルーベリー畑や山草園が広がる。
季節ごとに様々な花が咲き、色々な花祭りが開催され、訪れる人達の目を楽しませてくれる。

私が訪れたこの日はルピナスが見頃で、園内ではルピナス祭りが催されていた。

子供の頃はほとんど見ることがなかったような気がする、このルピナスという花。
いつのまにかときどき見かけるようになった。
よく近づいてこの花を見ると、花一つ一つが随分へんてこな形をしているとわかる。専門的には『蝶形花』という形らしい。

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ルピナスの実物を見たのは(記憶にある限り)大人になってからだと思う。
だけど、実はその名前と花の形を、私は子供の頃から知っていた。

それは子供の頃、図書室で読んだ一冊の本にさかのぼる。
バーバラ・クーニーの『ルピナスさん』という児童向けの絵本。

ルピナスさんは、海をみおろすおかのうえにある、小さないえにすんでいます。
いえのまわりには、あおや、むらさきや、ピンクの花が、さきみだれています。
ルピナスさんは小さなおばあさんですが、むかしからおばあさんだったわけではありません。
世界中を旅行しましたし、「世の中を美しくする」ためにステキなことを思いつきました。
      バーバラ・クーニー 作   『ルピナスさん』 あらすじ より


"ルピナスさん"と呼ばれる女性はミス・アリス・ランフィアス。彼女は子供の頃におじいさんと話した3つのことを実現する。
「大きくなったら遠くに行く」
「おばあさんになったら海のそばの町に住む」
「世の中をもっと美しくするために何かをする」
3つ目の約束を叶えるためにミス・ランフィアスがしたこと。
それは村中にルピナスの花を咲かせることだった。

子供の頃、気ままに世界を旅したり、ルピナスの種を蒔いたり、絵本一面に描かれるミス・ランフィアスのどこまでも自由で明るい雰囲気に憧れた。
大人になった今は、加えて、独りでも前向きに夢を叶えていく姿に勇気づけられる。

そんなルピナスは一輪だけだと、私にはへんてこな花に見えるけれど、色とりどりの花々が一面に咲いていると賑やかでとても楽しい。
原色が少なく、パステルのような優しい色合いが多いので、ふんわり大らかで楽しい印象がある。
ミス・ランフィアスが咲かせたルピナスもきっとこんな風景だったのかなと思いながら、園内を見て歩いた。

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そういえばこの日、八戸から十和田までへ向かう間、白い紫陽花のような花をつけた木を何度も見かけた。
花は紫陽花に見えるが、明らかに背が高いし、関東でもやっと咲き始めたばかりの紫陽花が、同時期に青森で咲くはずはない。
気になって、後々家で調べたところ、花の形からそれが"大手鞠"という花木であることを知った。
大きな手鞠のような花をつけるからそういうらしい。見たまんまの名前なのできっと忘れない。

園内には小さなウサギが数匹飼われていて、ピーターラビットさながらのネザーランドドワーフ達が無邪気に草を食む姿は、何時間見ても見飽きないほど可愛い。

茅葺民家『鯉艸亭』では山菜そばを頂いた。
普通のお蕎麦の感じだったけれど、山菜は穫れたてのシャキシャキした歯ごたえがあり、とても美味しかったのが心に残っている。

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この翌週には、ルピナス祭りに続いて芍薬祭りが開かれるということで、芍薬園には大きなまんまるの蕾が今にも花開きそうな様子で溢れていた。
そのうち、いくつか早咲きしている芍薬があった。冒頭の写真の芍薬も、その一つ。
艶やか、その言葉が似合う立ち姿にはすっかり見とれてしまった。

花々溢れる長閑な農村の風景。
そういえば、花を愛でる、それだけを目的にした旅は随分と久しぶりな気がする。
ルピナスさんのように、"世の中を美しく"した農家が一つ。それがこの鯉艸郷だと思う。
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by norlie | 2013-06-26 10:22 | ぷらっと青森
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