黄葉の森を歩く@青森・八甲田 sanpo
10月中旬、北東北の紅葉の時期に合わせて帰省したいと思い、金曜の夜に新幹線に乗った。
月曜に休みを取って、土日をまるまる東北で過ごせる日程で、久しぶりの秋の紅葉を楽しみに帰った。

お天気に恵まれた週末、土曜日に向かったのは八甲田。
八甲田の山頂付近の紅葉は見頃が終わって落葉時期に入っており、この時期は中腹が丁度いい見頃を迎えていた。
来週はこの紅葉が山を下り、奥入瀬渓流の紅葉が最盛期になる。
その時期とは少しずれてしまったが、八甲田中腹の紅葉と言えば、蔦沼めぐり。
そんなわけで、数年ぶりに蔦沼の森を散策することにした。
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静かなブナの森はすっかり黄金色に染まっていた。
頭上を覆う見事な黄葉に思わず溜息が漏れた。

散策路に沿うように流れる小川は仄暗く、一見少しも水が動いていないように見える。
全く動きのない水は、暗くても透明度が高いのか底まではっきり見えた。
水底でめだかぐらいの小さな魚がたくさん泳いでいる。
一枚のもみじがひどく緩慢に、1秒5mmくらいずつゆっくりと水面を動いていくので、ちゃんと流れはあるんだとわかった。

こうやって足を止めて、目を凝らし、じっくり見つめて、はじめて森の息づかいが聴こえてくる。
そのくらい静けさに満ちた森。
でもその静けさは決して重苦しくなく、空気がとても澄んでいて、心地いい。

蔦沼に来たのは、数年ぶりのこと。
ああ、ここって、こういう森だったと改めて思い出したのだった。
この感覚を随分長いこと忘れていた気がするなあ。
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『蔦沼』というのは、八甲田の蔦温泉の裏手の森にある沼の一つ。
その名前が一番知られているので、1つの沼と思われがちだが、実際にはいくつかの沼が点在している。
蔦沼、長沼、菅沼、ひょうたん沼、鏡沼、月沼、赤沼という湖沼群は『蔦の七沼』と呼ばれているけれども、赤沼は遠いので、散策路から巡れるのは赤沼以外の6つの沼である。
地図で見ると赤沼はかなり大きいようなので、いつか見てみたいなあと思ったりもする。

この日、森の中はぴたりと風がやんでいて、水面が鏡のようになっていた。
さざ波も立たない暗い沼は、水鏡がくっきりと紅葉を映し出す。
水に映る紅葉は色々な場所で見てきたけれども、いつも少し波立っていた。
ここまで完璧な鏡のような状態は、私は見るのが初めてだった。

シンメトリーな紅葉が目の前に広がっている。
上と下、両方に向かってブナの枝が伸び、天にも地面にも紅葉が見える。
森の中だからこそ波が立ちにくく、光が遮られて仄暗いからこそ、昼間なのに鏡の条件が揃う。
沼ならではの不思議な世界観に、足を縫い止められたように魅入ってしまった。

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森の面白さは沼だけにあらず。苔もかなり面白い。
久しぶりの、めくるめく苔世界。
散策路のあちこちに、不思議な苔が生えている。
小人目線で近寄ってみると、それはナウシカに出てくるような森のようでもあり、ふかふかの緑の絨毯のようでもある。
奥入瀬も苔が豊富で面白いが、蔦の森もまた面白い。(余談だが、蔦の森はきのこも豊富)

楽しい散策を終えて、蔦温泉に戻ってくると、燃えるような紅葉が空に向かってぶわっと広がっていた。
森へ入る人、森から出てくる人が行き交っている。でも、ごった返すような混雑ではなく、ちょうどいい。
青森はこういうところが好き。

一人で歩く人、家族で来る人、二人で来る人。
皆がそれぞれの森を楽しむ季節。冬が来る少し前の、八甲田の愉しみです。


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by norlie | 2015-10-25 20:06 | ぷらっと青森
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