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■ Paris Je T'aime / パリ・ジュテーム
観たい観たいと思いながら、やっと観に行ける暇ができると公開が終わっている…ということはよくあること。
だけど、それでもなお、観る機会に恵まれる映画とは、きっと相性がいいんだろうと思うことにしている。
この映画『Paris Je T'aime』もそんな映画のひとつ。
関東で上映が終了してしまった後に、たまたま帰省していた地元の小さな映画館で、上映が始まったばかりだった。こういうときは、素直に嬉しい。

■ Paris Je T\'aime / パリ・ジュテーム_e0048530_22555783.jpg

パリの20区各所を舞台に描かれる18話のオムニバス。
この企画に賛同した名監督18人が、それぞれの才能を活かして、5分間のショートストーリーを綴る。物語を演じる俳優陣も、何気なく豪華で、結構夢の競演なのでは、と思った。

公式のウェブサイトで、「アンソロジー(詞華集)」と称されているこの映画。
気に入った物語をいくつかあげると…





■12区 バスティーユ
「妻に恋する男を演じることで、男は妻に2度目の恋をした。」
この最後のほうに出てくるフレーズが忘れられない。この映画の中で一番気に入った物語。
妻と離婚しようと心に決めた男が、妻のある告白を境に、もう一度妻に恋をする。
妻の料理や鼻歌、全てにケチをつけていた男の、豹変振りがなんだか皮肉めいていて面白い。

それなのにラスト、赤いコートの女性を目にした男の、どうしようもない喪失感が、スクリーンを通じて胸にじーんときた。
変に泣かせようとする最近の日本の映画よりも、ずっと私の心に残るんじゃないか。
本当の悲しみは、淡々と過ぎる毎日の中に宿る。

■5区 セーヌ海岸
映画の中では結構最初のほうに出てくる一話。
監督は『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダ。これを知っていて観ると、主人公のフランソワが一目惚れする相手に、にやり。パーミンダ・ナーグラが演じた『ベッカム~』でのヒロインはインド系移民の女性だったが、今回のヒロインもまた、イスラム系の移民女性。
フランソワの純情一直線な表情と、ヒロイン・ザルカの強くて優しい表情に、ただただ恋を応援してしまった作品。後味もさわやかな青春系(?)

■9区 ピガール
『8人の女たち』のファニー・アルダンがかっこいい。
フランス語で話す女性と、英語で話す男性が、何やら意味深な恋愛劇を繰り広げる。
この2人、どういう関係…?と思わせておいて、最後のオチには、思わず小さく笑ってしまった。

■14区 14区
日常を離れて、異国の地を歩く中年女性の物語。
これがまた、私の旅先での心情にぴったりで、笑ってしまった。
墓地に刻まれた名前を読み間違えたり、一人でカフェに入って切なくなったり。
だけど、あの最後に公園で起きるできごと。
何が起きるわけでもないのに、絶妙な機微を捉える脚本が、お気に入りです。

ほかにも、
パントマイム同士の恋と、息子の愛らしさが微笑ましい『7区 エッフェル塔』、
ナタリー・ポートマンの元気印の女性とその恋にはらはらする『10区 フォブール・サン・ドニ』、
イライアス・マッコネルとギャスパー・ウリエルの美男子2人の間に流れる空気感にドキドキする『4区 マレ地区』(マッコネルとガス・ヴァン・サントといえば、『エレファント』の組み合わせ!)、
スティーブ・ブシェミが哀れすぎる『1区 チュルイリー』。さすがコーエン兄弟と思ってしまう皮肉な笑いをこめた一作、
大人のやりとりが何とも味わい深い『18区 モンマルトル』、
オスカー・ワイルドが眠る墓地を舞台にした『20区 ペール・ラシェーズ墓地』(ルーファス・シエルが初めてかっこよく見えた)、
など、なかなか魅力的な作品多し。

DVDを買ったら何度も観てしまいそう。
短編作品って、描かれている部分が少ない分、観れば観るほど味があって、結構好きだ。

『Paris Je T'aime』-パリのガイドブック代わりに、オススメです。
by norlie | 2007-07-07 22:56 | Movie / TV
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